1.ご自身や身内の方などが警察の捜査対象となっておられる方へ
刑事事件の対象となった場合、逮捕・勾留されているかどうか(勾留事件/在宅事件)で、大きく状況が異なります。
逮捕・勾留されている場合には、速やかに弁護士を弁護人に選任して、身体解放に向けた対応をする必要がありますので、すぐにご相談いただくことをお勧めします。
逮捕・拘留されておらず、在宅で捜査されている事件でも、弁護士が弁護人となり検察官に働きかけをしたり、被害者と示談をしたりすることで、起訴や略式起訴(罰金)を回避し、不起訴処分とすることができるケースもありますので、弁護人をつけるかべきか、一度ご相談ください。
2.捜査段階と起訴段階での弁護人の活動
(1)捜査段階
捜査段階の弁護人の活動は、逮捕・勾留されているかという点と、嫌疑を認めているかどうかという点(自白事件/否認事件)とで変わってきます。
逮捕された事件の場合、弁護人が警察や検察庁に働きかけることにより、早期に釈放させることができる場合があります。さらに裁判所に勾留しないよう申入れたり、異議申立て(勾留決定に対する準抗告)をすることによって、釈放を獲得できるケースもあります。
その後の弁護人の活動は、勾留か在宅かにかかわらず、否認事件では、被疑者に取調べへのアドバイスをするとともに、目撃者への聞き取りを行ったり、アリバイ証拠を集めるなどして、検察官に対して、不起訴などにするように働きかけます。被疑者が被疑事実を認めている事件(自白事件)の場合には、被害者との示談交渉を行うなどして、同じく検察官に対して、不起訴などの軽い処分となることを目指します。
勾留は原則として逮捕されてから13日以内ですが、裁判所の許可があればさらに10日延長されます。弁護人は、上記のような活動をして、できるだけ早期に、釈放されるように取り組みます。また、最終処分が不起訴処分となると、「前科」ではなく「前歴」に留まりますので、不起訴処分となることを目指します。
なお、共犯者がいる場合などには、弁護人以外との接見が制限される(接見禁止)こともあります。その場合には弁護人がご親族などとの連絡の間に入る対応もすることになります。
(2)公判段階
捜査の結果、検察官が正式に起訴をすると、公判手続(裁判所での裁判手続)に移行し、被疑者を被告人と呼ぶようになります。
公判手続も自白事件と否認事件で流れが異なります。また、裁判員裁判の対象となる一定の重大な犯罪の場合にも手続が異なります。
自白事件では、弁護人は、被害者のいる事案では示談交渉や被害弁償を行い、また薬物事案などでは再度の薬物使用を避けるための取り組みをし、公判期日に今後の監督をする親族を情状証人として尋問するなど、被告人の量刑軽減に向けて活動をします。
否認事件では、弁護人は、アリバイその他の無罪立証を行ったり、検察側証人の証言が信用できないことを指摘するなどして、無罪判決の獲得に向けて活動をします。
裁判員裁判対象事件でも基本的な弁護人の活動は共通していますが、公判前整理手続という事前の準備手続が採用されるため、その対応をします。また裁判員の選任などにも意見を述べます。さらに裁判員裁判の公判期日は連続して実施されるため、その集中した審理に対応した弁護活動を行います。
被告人が捜査段階で勾留されていた場合、ご親族等と保釈保証金の準備について協議の上、起訴後に保釈請求を行い、釈放を目指します。
3.ご相談事例
酒に酔ってトラブルになって、相手を殴って怪我をさせてしまいました。その後、警察に呼ばれて取調べを受けています。今後、弁護士さんにお願いすると、どのようなことをしてくれるのでしょうか。
弁護士は、弁護人として、相手の被害者と連絡をとって示談交渉を行い、相手と示談が成立した場合には、検察庁に示談書の写しを提出するなどして、検察官に対して不起訴とするように働きかけます。
息子が大麻を使っていたために警察に逮捕され、その後に、正式に起訴されてしまいました。現在、息子は拘置所にいるのですが、保釈は認められるのでしょうか。
保釈は、正式に起訴された被告人について、保釈保証金を納付することを条件として、身柄拘束を解く裁判を言います。保釈保証金は、被告人が逃亡しないように裁判所に納めるもので(被告人が逃亡しなければ返還されます)、金額については裁判所が決定しますが、150万円~300万円程度の金額になることが多いようです。最終的に、保釈が認められるかは、裁判官の判断次第になります。
4.解決事例
会社の通勤途中の電車の中で、痴漢の疑いをかけられて警察に逮捕された事例で、被疑者と接見を行い、検察庁に意見書を提出するなどして勾留請求前に釈放させ、最終的に不起訴処分になりました。同様の事案で、検察官が勾留請求し、裁判所が勾留決定をした事案で、準抗告(不服申立て)をし、勾留請求却下となり、釈放させ、最終的に不起訴処分になりました。
友人とけんかをして殴って傷害を負わせた事例で、被害者と示談交渉を行って示談を成立させ、検察庁に示談書を提出して、不起訴処分になりました。
窃盗(万引き)で一度有罪判決を受け執行猶予期間中に再度窃盗(万引き)で逮捕されて起訴された事例で、窃盗癖(クレプトマニア)であることなどを主張して、その旨の診断書を提出するなどして、再度の執行猶予判決が出されました。
覚せい剤自己使用で起訴されたが、捜査段階で警察官の違法捜査があった事例で、採取された尿の鑑定書について違法収集証拠で排除されるべきと主張して、判決で、有罪とされたものの、警察官の捜査が違法と認定されました。
5.弁護士費用
弁護士費用の詳細は、弁護士費用のページをご参照下さい。
6.弁護士から一言
刑事事件でご自身や身内の方が被疑者として捜査の対象となったり、逮捕されると、精神的にショックを受けますし、その後の取調べや被害者との示談などにどう対応して良いか戸惑われる方も多いと思います。そうなったときには、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。