離婚・親子

1.離婚や子どものことで悩んでいる方へ

離婚をするにあたっては様々な法的な事柄を決めなければなりません。離婚の際の取り決めは、その先の人生に大きな影響を及ぼします。後々まで納得できる解決のために、当事者間での協議や調停の段階から弁護士に相談・委任されることをお勧めします。

はじめに、離婚の手続と決めるべき事柄について簡単に説明します。

  • 離婚をするための手続の流れ
  • 離婚には、当事者どうしで話し合う(協議離婚)、裁判所の調停手続を利用する(調停離婚・審判離婚)、裁判所に訴訟を提起する(裁判離婚)の3つの方法があります。当事者どうしの話し合いでまとまらない場合、原則として、そのまま裁判をすることはできず、まずは調停を利用する必要があります。調停は裁判所の調停委員が仲介役となって二人が合意できる妥当な解決をめざすものです。
  • 離婚をするにあたって決めるべきこと
  • 財産分与、親権、養育費、子どもとの面会交流、慰謝料等があります。
  • 離婚が決まるまでの生活費はどうなるのか
  • 離婚をする前に別居をする場合があります。この場合、夫婦のうち、収入の多い者が少ない者に生活費(婚姻費用)を支払う必要があります。話し合いをしても支払いをしてくれない場合は、早期に裁判所に調停を申し立てましょう。

2.ご相談事例

離婚時に取り決める法的な事柄に分けて、よく見られる相談事例とその回答を記載します。

(1)親権

夫から、あなたは収入が少ないので親権を持つことができない、自分が親権者になると言われました。私は子どもの親権を諦めなければならないのでしょうか。

収入の多い少ないだけで親権者が決定されるわけではありません。親権者は、これまでの養育状況や今後の養育環境等をみて、子どもの健全な成長を優先して決定すべきことです。話がまとまらない場合、裁判所の調停手続で子どもの心理の専門家(家庭裁判所調査官)に状況を調査してもらった上で決める場合もあります。

離婚のときに相手方が親権者になりましたが、その後、相手方は無職になり、子どもをきちんと養育していません。親権者を私に変更してもらうことはできますか。

一度決めた親権者をその後変更することは可能ですが、必ず、家庭裁判所の調停か審判を申し立てなければなりません。親権者を安易に変更することは子どもに悪影響を及ぼしますから、親権者の変更をしなければならない事情が必要です。親権者が無職になり、将来的にも就業が見込まれず、その環境が経済的・心理的に子どもの健全な成長を阻害するものであれば、親権者変更が認められる可能性があります。

(2)養育費

子どもを私立の中学・高校に入れたいと思っていますが、離婚しても私立の学費を相手にも支払ってもらうことはできますか。

養育費の金額を決める際に広く利用されている「算定表」では公立学校の学費を考慮されていますが、私立学校の費用は考慮されていません。しかし、双方が子どもの私立学校への進学を了解している場合や、収入や資産から養育費を支払う側にも負担させることが相当な場合は、算定表の金額に私立学校の学費を上乗せした金額が認められることもあります。

(3)面会交流

妻から、離婚後は子どもに会わせたくないと言われています。離婚後に子どもと交流する取り決めをすることはできますか。

離婚をする際に、面会交流のルールを決めるのが一般的ですが、「子どもと面会交流することを認める」というように漠然とした内容にとどめることもよくあります。他方で、頻度、場所、方法等について具体的にルール化することもあります。裁判所では、明らかに子どもの福祉を害しない限り、面会交流が認められるべきという考えがとられています。相手方が子どもに一切会わせたくないというのは理由があるのかもしれませんが、そのことも含め、離婚調停の場で話し合いをすることが必要です。

別れた夫は家庭内暴力の酷い人でした。4歳の子どもは夫を怖がり会いたがっていないのですが、夫からは面会交流は親の権利なのだから会わせろと執拗に連絡がきます。必ず会わせなければならないですか。

裁判所の方針は、明らかに子どもの福祉を害しない限り、面会交流を認めるべきというものです。しかし、子どもにとって悪影響を及ぼす場合にまで、面会交流を実施するべきではありません。裁判所の調停手続で、元配偶者のDVのことなどをしっかりと説明する、裁判所や相手方に子どもの心情を正しく理解してもらうために調査官調査を実施してもらう等により、直接面会することは控えるといったルールにすることが可能な場合も十分あります。

(4)財産分与

長い間専業主婦をしてきました。私名義の預金は500万円くらいです。夫名義の預金は2000万円くらいありますが、夫から、これはオレの預金だから離婚してもお前には一円もやらないと言われました。夫の言うとおりなのでしょうか。

夫婦が結婚している間に取得した財産は夫婦が平等に協力して形成したものであると考えられていますので、名義にかかわらず夫婦は原則として2分の1ずつの権利を持ちます。したがって、離婚の際には夫名義の財産も原則として2分の1を妻に分与しなければなりません。なお、財産分与の対象となる財産には、不動産や預貯金の他、退職金見込額などが対象となる場合もありますので、よく夫婦の財産を把握した上で、取り決めることをお勧めします。

(5)離婚に伴う慰謝料

夫は若いころ何度も浮気をして私を苦しめました。度重なる女性問題で夫婦関係が冷え切り離婚に至ったと思っています。離婚にあたっては、これまでかけられた苦労について慰謝料を請求したいです。

夫に浮気(不貞)をされた場合、それは不法行為ですから夫に対して慰謝料請求をすることができます。しかし、浮気そのものについての慰謝料請求は最後の浮気から3年以内で時効にかかり、以後は請求できません。一方で、その後離婚することになった場合、離婚の原因を作った側が相手方に対して離婚に伴う慰謝料を支払わなければならないこともあり、3年以上前の浮気が離婚の原因になっていれば、このことについて離婚慰謝料が認められる場合があります。

(6)不貞慰謝料請求

夫は私以外の女性と付き合っているようです。相手の女性に慰謝料を支払ってもらうことはできますか?

浮気は不法行為であり、浮気をしている夫婦の一方と浮気相手は共同で不法行為をしていることになります。そこで、浮気相手に慰謝料請求をすることができます。慰謝料として認められる金額は、浮気の期間、頻度、それによって離婚に至ったか否かによって様々上下する傾向です。

(7)家庭内暴力(DV)でお悩みの場合

夫から暴力を受けています。別居しても夫に見つかったら連れ帰らされるでしょうし、そうしたらもっと暴力がひどくなると思い、別居に踏み切れません。どうしたらいいでしょうか。

配偶者から暴力を受けている場合、早期に行政機関や弁護士に相談してください。別居をするのが適切なケースがほとんどです。別居が実現したら、配偶者に連れ戻されたりしないように、DV防止法に基づき保護命令を申し立てることが考えられます。申立てが認められれば、裁判所が配偶者に対してあなたに近づいてはならないという罰則付きの命令等を出してくれます。

夫に、友だちと付き合うなとか、会社の人と飲みに行ってはならないと言われて、誰とも交流しないようになってしまいました。お前が働かなくても生活できるから仕事をやめろとまで言われています。また、夫は私のことを無能だとか社会人として恥ずかしいと言ったりもします。私が全部悪いのでしょうか。

夫婦は対等であり、友達付き合いをやめさせたり、仕事をやめさせたりする権利はどちらにもありません。行き過ぎた束縛はあなたの自由を奪う一方的な支配であり、DVの一つといえます。また、相手の人格を否定するような言葉を浴びせることは相手を深く傷つけ、場合によっては回復困難な傷を負わせることにもなりかねないものであり、DVの一つのモラル・ハラスメントと呼ばれることもあります。これらの行為は夫婦間でも許されないことです。ひとりで抱え込まずに早期に行政機関や弁護士に相談してください。

(8)配偶者に子どもを連れて行かれた!

離婚の話がまとまらず、しばらくの間別居をしています。先週の面会交流のとき、子どもを返してくれなくなってしまいました。子どもを戻してもらうことはできますか。

別居後に子どもを監護養育している親は子どもを監護する権利があるのですから、一方的に子どもを奪うことは不法な連れ去りにあたる可能性があります。この場合、子どもの引き渡し(仮処分を含む)と監護者指定を裁判所に申し立てましょう。離婚前は両親ともに親権者ですから、連れ去り後時間が経過してしまうと連れ去った親と子どもの関係を軽視することはできなくなります。そこで、裁判所への申し立ては連れ去られてから期間が経過しないうちにすることが必要です。

3.解決事例

養育費の支払いは20歳までという合意があり、養育費を支払う側の親が子どもの大学進学を事前に同意していなかったケースで、子どもが大学に進学したことから大学卒業の年齢である22歳の3月まで支払いを延長するという内容の審判を得ました。

別居中の生活費である婚姻費用について、個別の事情を考慮して、公平の観点から、算定表では考慮されていない住居費の一部や習い事費用を含め、算定表の額を月額10万円程度超える金額を認める審判を得ました。

結婚中に夫の妻に対する暴力が激しかったが子どもには暴力がなかったケースで、離婚後元夫が子どもと直接会うことを求めていたが、元夫の暴力の悪影響を丁寧に主張立証した結果、直接の面会交流ではなく定期的に子どもの成長の様子を報告するという間接的な交流のみを続けるという審判を得ました。

離婚後に子どもを引き取った親権者がその後無職となって自宅に引き籠るようになり、子どもの養育はもっぱら同居の祖母が行っていたケースで親権者変更を申し立てたところ、親権者変更が認められました。

夫から殴る蹴るの暴力を受け避難した女性から依頼を受け、裁判所に保護命令の申し立てをしました。夫の監視が厳しいため、依頼者は自身が怪我を負った時の写真を撮ることができず、また病院に行くこともできなかったので医師の診断書等の証拠が全くなかったのですが、依頼者から聴き取りをして詳細な陳述書を提出等したことにより、裁判所から接近禁止命令を出してもらうことができました。

4.弁護士費用

離婚事件の弁護士費用は、弁護士費用のページをご参照下さい。

5.弁護士から一言

離婚は結婚した夫婦の誰にも起こりうるものです。夫婦間の問題だから弁護士に相談するのは大袈裟であり、二人で話し合って決めればいいと思われるかもしれませんが、離婚の際の決め事はその先の長い人生に影響を持つ重大なものであり、また、法律の専門知識がなければ公平な結果を導くのは困難なことも多いです。夫婦・家庭の問題では特に当事者は適正な判断ができにくいものですから、自分だけで抱え込まずに、気軽に弁護士にご相談ください。TOKYO大樹法律事務所は、男女の弁護士が複数揃っていますので、「女性/男性の弁護士の方が相談しやすい」といった要望にもお応えできます。