TOKYO大樹法律事務所

コラム

相続法が変わりました

弁護士 近藤 博徳

 今年7月に、相続に関する民法の規定の大幅な改正がありました。その概要をご紹介します。
1 例えば自宅を所有していた夫が死亡した場合、今の制度では妻以外の相続人が自宅を相続すると妻は建物から退去しなければならず、これを回避するためには、「夫婦の間で無償の使用貸借の契約があった」などと理屈をつけて妻の居住権を確保するような工夫が必要です。これに対して改正法は、最低でも6ヶ月以上、妻が自宅に無償で居住する権利を認めました。これによって、妻は今までの住まいをすぐに立ち退かなくともよくなりました。
 また同じ例で、妻が自宅に住み続けられるようにするために、改正法は「配偶者居住権」という権利を作りました。妻の居住権が正面から法的に保護される上、「所有権」よりも「配偶者居住権」の方が財産的評価が低いため、遺産分割の際に妻は「配偶者居住権」を相続した上でさらに現預金などの生活資金も相続することができるようになり、その後の生活の安定が図られます(この2点は平成32年7月までに施行)。
2 夫婦の間で居住用不動産の贈与があった場合、今の制度では特別受益として相続の際に控除されてしまいますが、改正法は、婚姻歴20年以上の夫婦の間での居住用不動産の贈与は原則として特別受益から除外することができる、という扱いを定めました。
3 現行法では自筆証書遺言は財産目録も含め全て手書きが必要ですが、改正法は、目録の作成負担を軽減するために、パソコン等で作った目録や預金通帳のコピー・不動産の登記事項証明書等を自筆証書遺言の目録として添付するすることを認めました。(平成31年1月13日施行)。
 また、改正法は自筆証書遺言の紛失やその改ざん等に関する紛争を防ぐために、法務局で保管する制度を新設し、法務局で保管した自筆証書遺言は検認が不要としました(平成32年7月までに施行)。
4 相続人以外の親族が被相続人の介護などを行った場合、今の制度ではこの親族が寄与分に当たる主張をすることはできませんが、改正法は、「特別寄与者」として他の相続人に対し金銭の請求をすることを認めました。これによって、介護に寄与した親族の貢献が適切に評価されるようになります。
 その他、遺留分制度に関する改正など、重要な改正があります。改正法は、上記に括弧書きしたもの以外は来年7月から施行されます。
(2018年8月)