TOKYO大樹法律事務所

コラム

暴力団と振り込め詐欺

弁護士 佐々木 学

 振り込め詐欺というと、息子や孫のフリをした加害者がお年寄りに電話をかけて、お金をだまし取る犯罪です。暴力団の幹部が積極的に振り込め詐欺に関わっているという印象を持つ人は少ないのではないでしょうか。
 ところが、最近は、振り込め詐欺などの特殊詐欺などに暴力団が関与している件数が増えています。一部報道によれば、暴力団対策法が施行されてから、暴力団員の人数が減少しています。そして、人数の減少に伴い、暴力団員による傷害や恐喝などの摘発件数は減少しています。しかし、その一方で、暴力団員が詐欺で摘発される件数はむしろ増加しているのです。暴対法で追い詰められた暴力団が、新しいシノギの場として、振り込め詐欺を選んだということでしょうか。
 振り込め詐欺に暴力団が関与しているといっても、実際に被害者に電話をかける役の「かけ子」や被害者から振り込まれた金銭を口座から引き出す役の「出し子」などの実行犯は、学生などの一般の若者にやらせていることが多いのです。そして、暴力団の構成員自体は、それら実行犯の背後にいるケースがほとんどです。また、振り込め詐欺グループの組織図は、複雑なピラミッド構造をしています。暴力団の組長などの幹部は、そのピラミッド構造の頂点に位置します。
 ここからは法律の話しになります。さて、被害者としては、振り込め詐欺の実行犯が刑事事件で逮捕・処罰されるだけでは気持ちが収まりません。民事事件で、だまし取られたお金を返して貰いたいというのが一番でしょう。ところが、逮捕された実行犯は、すでに使うなどしてお金を持ってないことが多いのです。そのため、実行犯を相手に民事裁判を起こしても、だまし取られたお金の回収は難しいのです。
 そこで、これまで、一部の弁護士グループで、民法の使用者責任の規定(同法715条)や、暴力団の威力を利用した資金獲得行為を規制した暴対法の規定(同法31条の2)を使って、暴力団組長の責任を追及する民事裁判を提起できないか検討されていました。そして、実際に、現在、全国各地の裁判所で、特殊詐欺の被害者の方々が暴力団幹部らの責任を追及して損害賠償の支払いを求める民事裁判を提訴しています。
 民暴案件に関わる弁護士としては、この裁判の今後の成り行きに注目しています。

(2017年11月)